発表

一般研究発表(ポスター)
2AM-066

顔刺激サイズが表情認知に与える影響

[責任発表者] 乙訓 輝実:1
[連名発表者] 小田 浩一:1
1:東京女子大学

目 的
 表情認知をするために必要な空間周波数について調べた研究は多数存在し、笑顔のような表情は6.2 cycles /facewidth(顔のこめかみの幅)程度の低空間周波数の成分だけで認知が可能である。一方、目の形や唇の角度など細かい情報を知覚しなくてはならない真顔の認知には20 cycles / facewidth周辺の高空間周波数が必要であることが知られている(永山ほか, 1995;田淵・田山,2002)。
 宮崎(2008)はMNREAD-Jを応用し、表情認知の正答率と速度を測定した。この結果、顔が十分な大きさであれば、一定の最大速度(以降、MFRS)で表情認知が可能であり、MFRSで認知できる最小の顔サイズが臨界顔サイズ(以降、CFS)であった。
 また表情認知は、表情変化の時間の影響を受け、喜び・怒り・驚き表情は時間が短く、悲しみ表情は時間が長い場合に表情を強く知覚する(乙訓・小田,2014)。
 本研究では宮崎(2008)と同様の方法で、表情認知の評価を行う。その際、表情認知の速度に焦点を当て、表情の種類ごとに見られるCFSやMFRSの違いを明らかにする。

方 法
 刺激:実験で使用した顔表情画像は、日本人女子大生8名分のモノクロ写真を合成した平均顔であった(川嶋ほか,未発表)。表情は喜び、怒り、悲しみ、驚きの4種類であった(図1)。表情強度は平均顔作成時の真顔を除いた各表情画像の強度を100%とし、100%の表情強度のみを使用した。顔刺激サイズ(顔のこめかみの幅)は視角638.8〜7.6分であった。
 装置:制御にはApple MacBook Pro 13inchを用い、刺激呈示にはSONY製の21inchのCRTディスプレイGDM-F500を使用した。呈示アプリケーションはPsychopy v1.81.03を用いた。
設定した解像度は1024×648pixel、リフレッシュレートは60Hzであった。
視力条件:正常視力条件と視力0.1条件の2種類であり、視力0.1条件はRyser Optik社のOcclusion Foilを用いてコントロールした。
 実験協力者:小数視力1.0以上の女子大生であった。
 手続き: 刺激の呈示順において、表情の種類はランダムで変化し、顔サイズは極限法(下降)で呈示した。1試行の流れは、凝視枠画面を注視させた後、顔表情画像の刺激を呈示した。凝視枠の呈示時間は500〜1500msの範囲でランダムに変化した。実験協力者は呈示した表情が分かり次第、キーボードのキーを押す事で表情を弁別した。キーの割当は、a:喜び、f:怒り、h:悲しみ、l:驚きであった。反応時間は、刺激が呈示されてから実験協力者がキーを押すまでの時間とし、測定した。

結 果 と 考 察
 各表情に対する反応時間と正答率からCFSとMFRSを求めたところ、全ての視力条件と表情に対して、表情認知の速度曲線を得ることができた(図2)。図から、CFSは視力と表情の両方から影響を受けることが明らかになった。これは表情を認知する際に必要な空間周波数が表情によって異なるためだと考えられる(永山ほか,1995)。
 一方、MFRSには視力の変化による差はあまり見られなかったが、表情の種類の影響を受ける傾向が見られた。これは表情の種類によって、情動を知覚する時間が変化するためだと考えられる。喜び・怒り・驚きは表情変化の時間が短い時に表情を強く知覚する。これに対し、悲しみ表情を知覚する際には、より長い時間がかかることから、悲しみ表情は他の表情と比べて、MFRSが遅くなったと考えられる。

引用文献
 宮崎博子(2008).表情認知における閾値の再検討 東京女子大学大学院 現代文化研究科 現代文化専攻 修士論文
 永山ルツ子・ 吉田弘司・ 利島保 (1995).顔の表情と既知性の相互関連性 顔画像の空間周波数特性の操作と倒立呈不法を用いた分析 心理学研究 66(5), 327-335.
 乙訓・小田(2014). 表情変化の時間と観察者の視力が感情の知覚に与える影響 日本基礎心理学会第33回学会 ポスター発表
 田淵久晃 ・ 田山忠行 (2002). 顔画像の認識に関する空間周波数チューニング 電子情報通信学会技術研究報告 ITS, 101(624), 79-84.

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