発表

一般研究発表(ポスター)
2AM-065

袋文字の視認性とコントラスト成分

[責任発表者] 高橋 あおい:1
[連名発表者] 小田 浩一:1
1:東京女子大学

目 的
 袋文字は社会で広く使われている書体だが、その視認性の低さが指摘されている(Arditi et al.,1997)。Takahashi & Oda(2014)は、従来の研究よりも複雑性のレンジを広げた刺激群の視認性は、文字の物理的複雑さを表す指標である線頻度(Majaj et al.,2002)によって線形に決まることを示した。これは、複雑な文字ほど視認性が下がると言い換えることができ、袋文字は非袋文字よりも複雑であるために視認性が下がると説明できる。また、この結果は、文字認知に関わる空間周波数が、線頻度によって変化する可能性を示しているが、線頻度の低い文字の視認性は線頻度では十分に説明できていなかった。線頻度以外に文字認知に影響を与える変数として、Arditi et al.(1997)はコントラスト成分を挙げている。彼らは、袋文字は非袋文字よりも文字認知に関わる空間周波数帯(1-4cpl)のコントラスト成分が少なくなるために視認性が低下すると考え、人間のコントラスト感度関数から視認性を説明した。使用した刺激が、線頻度が低いアルファベットであったため、この方法でTakahashi & Oda(2014)が説明できなかった線頻度の低い文字の視認性を説明できる可能性がある。そこで本研究では、Takahashi & Oda(2014)の結果をArditi et al.(1997)と同様の方法で、人間のコントラスト感度関数と刺激のコントラスト成分から袋文字の視認性を予測できるか検討する。画数が少ない刺激群においてのみ、コントラスト感度関数及びコントラスト成分からの説明のあてはまりがよくなると予想した。

方 法
 刺激は、Takahashi & Oda(2014)と同じものを用いた。3種類の画数グループ(画数少(2-3画)・画数中(8画)・画数多(16画))で構成される漢字群であり、各10字ずつ選出された。上記30字を文字の高さを揃えた非袋文字と、輪郭線の幅が文字の高さの1/24である袋文字でそれぞれ表した。使用した書体は、小塚ゴシックProN (線幅R)であった。
 実験で用いた認知閾のデータも、Takahashi & Oda(2014)と同一であった。実験協力者は、正常視力の日本人12名(年齢 22.3±1.6 歳)であり、繰り返し10 回の恒常法で50%認知閾を1刺激ごとに求めた。刺激提示装置は、Apple 社製 MacBook Pro (Retina ,13-inch, 2560x1600pixels, 227ppi, Lmax 319.4cd/m^2, Lmin 3.5cd/m^2)であった。
 刺激文字画像ごとに二次元高速フーリエ変換(FFT)を行い、空間周波数スペクトルを求めた。Arditi et al.(1997)と同様に、1-4cplのスペクトルを足し合わせ、平方根をとったものをコントラスト成分とし、認知閾との関係を調べた。

結 果
 まず、コントラスト成分と認知閾の間に有意な相関は見られなかった。また、Arditi et al.(1997)が求めたコントラスト感度関数から、袋文字の認知閾が非袋文字の何%の大きさになるかを予測し、画数グループ別に実測値と比較したところ、画数の要因と、予測・実測の別の要因の交互作用が有意であった(F(2,27)=346.268, p<.001)。これは、画数が多いとき予測と実測の差が広がったことを示している(図1)。

考 察
従来よりも複雑性のレンジを広げた刺激群を用いた本研究において、袋文字の視認性は、1-4cplのコントラスト成分とコントラスト感度関数から、線頻度の低〜中程度の漢字ではある程度予測可能であったが、線頻度が高くなると、予測は上手くいかなかった。これは、1-4cplのコントラスト成分で視認性を説明できるというArditi et al.(1997)のモデルを部分的に支持しているが、画数が多くなると予測は大きく外れたため、文字認知に関わる空間周波数帯域が文字の複雑性と共に変化するというTakahashi & Oda(2014)の考察を支持する結果になったと考えられる。


引用文献
Arditi, A., Liu, L., & Lynn, W. (1997). Legibility of outline and solid fonts with wide and narrow spacing. Trends in optics and photonics, series, 11, 52-56.
Majaj, N. J., Pelli, D. G., Kurshan, P., & Palomares, M. (2002). The role of spatial frequency channels in letter identification. Vision research, 42(9), 1165-1184.
Takahashi,A.,& Oda,K,.(2014), Legibility of Chinese Character in Outline Font Style and the Effect of Character Stroke Frequency.The 11th International Conference on Low Vision, Melbourne, Australia, April 2014.

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