発表

一般研究発表(ポスター)
2AM-064

蛇の回転バリエーション・双方向回転錯視の成立要因に関する研究

[責任発表者] 富田 新:1
1:いわき明星大学

【問題】富田ら(2012)は、北岡ら(2003)の“蛇の回転”錯視の円環状に配置された“青”または“黄色”の要素に継時的な彩度変化を加え、時計回り・反時計回りの双方向に回転印象が生じる“双方向回転”錯視を考案した。“双方向回転”錯視は動画であり、静止画像による北岡ら(2003)の“蛇の回転”錯視とは基本的に異なるものであると考えられるが、回転(運動)印象が生ずるメカニズムは一部共通である可能性もある。“双方向回転”錯視の特徴は以下の通りである。(1)“青”(または“黄色”)の彩度が変化することにより回転印象が生ずる。各色の彩度が上昇する時と下降する時で回転方向が反転する。(2)周辺視のみならず中心視でも回転印象が生ずる。(3)“双方向回転”錯視は、北岡(2006)が“輝度変化に依存する運動錯視”と呼んだ錯視バリエーションの1つである可能性が高い。同種の錯視としては、Anstis & Rogers(1975)のファイ及びリバース・ファイ、Gregory & Heard(1983)の錯視(phenomenal phenomena)等が知られている。
【目的】“双方向回転”錯視の“回転印象”の成立要因を探ることを目的とした。以下の4条件で錯視の“見え方”(“回転印象”や“運動印象”の程度)を調べた。(1)円周の数を減らしたとき、回転印象がどのように変化するか。(2)“双方向回転”錯視の刺激要素から“黒”と“黄色”(または“青”)を削除したとき(“青”を残す場合は“黒”と“黄色”を、“黄色”を残す場合は“黒”と“青”を削除)、回転印象がどのように変化するか。(3)(2)の刺激に“黒”を加えたとき、回転印象がどのように変化するか。(4)8個の刺激要素(“青−黒−黄色−白”の組み合わせ)を円環ではなく直線(横一列)に並べ、これらを縦方向に5列組み合わせることで“長方形”や“平行四辺形”の形をした刺激を作成した。また27個の刺激要素をランダムに配置した刺激を作成した。これらの刺激の“青”の彩度を系統的に変化させた時、それぞれの刺激の“運動印象”がどのように変化するかを調べた。また、それらの刺激を視野の中心に提示した時(中心視)と周辺に提示した時(周辺視)で“運動印象”がどのように異なるかを調べた。
【方法】刺激:“双方向回転”錯視の作成手順に従い、何パターンかの刺激を作成した。“双方向回転”錯視の作成手順は、構成要素である“青”(もしくは“黄色”)の彩度を、Adobe Illustrator及びAdobe Photoshopで100→90→80→…→20→10→0→10→20→…→90→100→90…と系統的に変化させ、1画像当たりの呈示時間を0.1Sとして、GIFアニメーションに合成するというものである。(1)〜(4)を検証するために作成された刺激は以下の通りであった。(1)“双方向回転”錯視の刺激の円周の数を減らし、より少ない円周で構成された刺激を作成した。作成された刺激は、8周、6周、4周、2周、1周の5パターン。(2)“双方向回転”錯視の刺激から“黒”と“黄色”または、“黒”と“青”を消去し、白地に“青”(または“黄色”)のみを単独で彩度変化させた刺激。黒地の背景に“黄色”のみを彩度変化させた刺激も併せて作成した。(3)(2)の3種類の刺激に、“黒”の要素をそれぞれ付加した刺激。(4)“双方向回転”錯視を構成する“青−黒−黄色−白(背景色)”から成る8個の刺激要素を、円環ではなく直線(横一列)に並べ、それらを5列組み合わせることで、“長方形”や“平行四辺形”の形をした刺激を作成した。また27個の刺激要素をランダムに配置した刺激も併せて作成した。これらの刺激をPC画面の中央、右端、左端のいずれかに提示し、中心視及び周辺視で見た時の運動印象を評定させた。評定:刺激を見た時の“回転印象”または“運動印象”を“はっきり見える”(4)〜“全く見えない”(1)の4件法で評定させた。参加者:いわき明星大学生15名。装置:東芝dynabook,T451/57DW。
【結果】(1)1要因分散分析の結果、円周の数の主効果が有意であった(p<.01)。円周8,6,4と2.1の評定値に差が見られ、円周数が少なくなるほど回転印象が弱くなることがわかった。(2)“青”または“黄色”1色を彩度変化させたとき、運動が見える程度を4件法で評定させた。分散分析の結果、色の主効果が有意であり(p<.05)、“黄色”の彩度変化に比べて“青”の彩度変化で“運動印象”が強いことがわかった。ただし、“回転印象”はほとんど生じていなかった。(3)(2)の刺激に“黒”を加えると、“青”の彩度変化に“黒”を加えたとき、“回転印象”が強く生ずることがわかった(p<.01)。また、黒”を加える位置(“青”(“黄色”)の右側または左側)によって回転方向が逆転した。(4)構成要素を円環ではなく、直線的に並べた時にも“運動印象”が生ずる。ただし、刺激配置(5)×視野(3)(中心・左・右視野)の分散分析では、刺激配置・視野の主効果及びそれらの交互作用はいずれも有意ではなかった。
【考察】(1)“双方向回転”錯視の回転印象は、円周を幾重にも組み合わせることによって強化されている。ただし、回転印象自体は円周が1周であっても生ずるため、回転印象の成立要因は円周の構造や数とは別にあると思われる。(2)“青”単独または“黄色”単独の彩度変化でも放射的運動印象は生ずるものの、回転印象は生じにくい。(3)単色の彩度変化に“黒”の要素を付加することで、回転印象が明確に生ずるようになる。ただし、“青”の彩度変化に“黒”を加えた時の方が、“黄色”の彩度変化に“黒”を加えた時と比べると回転印象が強い。その理由は定かでないが、“黒”と“青”、“黄色”のコントラストの違い、また“白”(背景色)と“青”、“黄色”のコントラストの違い等が影響していると考えられる。(4)“双方向回転”錯視の成立要因の1つは、刺激要素ユニット(“青−黒−黄色−白”)における“青”の彩度変化に起因している可能性が高い。要素的な運動印象が複数組み合わされることで、より全体的な運動印象(回転印象)につながっている可能性もあるが、刺激要素単独の運動印象(中心視)と複数刺激の運動印象(周辺視)に質的な違いがある可能性もある。

詳細検索
アプリバナー iPhone版,iPad版 Android版