発表

一般研究発表(ポスター)
2AM-063

親近性の高い文節の読み速度における文字サイズの効果

[責任発表者] 小田 浩一:1
[連名発表者] 乙訓 輝実:1, [連名発表者] 高橋 あおい:1, [連名発表者] 大西 まどか:1, [連名発表者] 杉山 美智子:1
1:東京女子大学

目 的
 平易な短文を読む速度は文字サイズの関数になり、二本の直線がよくフィットする。その二直線の交点は、すらすら読める最小の文字サイズを示すため、ロービジョン外来の臨床で重要な意味を持つことになった(Mansfield, Legge & Bane, 1996; 小田・Mansfield ・Legge, 1998)。このサイズは臨界文字サイズと呼ばれ、そこまで拡大することで視覚障害の人たちの読書障害が解消することが知られている(中村他, 2001)。その後、読書だけでなく漢字などを用いた視覚探索にも同様に臨界文字サイズがあることが分かってきた(阿佐・小田, 2010)。ここでは単文節の音読で同様のことが生じるかを検討する。単文節の音読は、測定時間が短いために精度の面で技術的な課題があるが、臨床テストの時間短縮ができるという大きな利点がある。

方 法
刺激:常用漢字2文字の熟語+ひらがな2字の助詞=4文字6モーラの文節 (例: 駅長なの、本物しか、対決だけ)。熟語は、NTTデータベースから4モーラの名詞を選び、その中でも文字単語親密性が高く(7段階中6.24±0.13)、左右の漢字の複雑度が同程度(7段階中3.58±0.38)の504個。助詞は、熟語と組み合わせた際に、3人の評定者が独立して、自然に感じ、読みやすかった26個。評定者は、日本語母語話者の大学院生3名であった。全潜在刺激数は、熟語504×助詞26=13,104個で、この中から実験のブロックごとに乱順列を生成して抽出した。フォントは、ヒラギノ角ゴシックW3、文字サイズは、視角3.10〜61.93分。視距離は、300cm、コントラストは、99%、背景輝度は、78.3 cd/m2であった。
装置:Apple Macmini + Xubuntu14.04 + GNU Octave3.8.2 + Psychtoolbox-3, EIZO ColorEdge CX241-CN
実験協力者:視力正常の年齢18〜26歳までの日本語が母語の女性15名。
手続き:ディスプレイの中央に固視視標を表示し、実験者のキー押しで、刺激文節に表示が切り替わった。実験協力者は、刺激文節をできるだけ速く正確に音読し、音読の終了とともに実験者はキー押しを行った。PCは2回のキー押しの間隔を音読時間として記録し、1試行が終了した。1試行が終了すると刺激の文字サイズが0.1log小さくなり、協力者が1文字も読めなくなるまで繰り返した。読書速度は、4文字÷読み時間(秒)×60で計算した。

結 果 と 考 察
 文字サイズに対する読書速度をプロットした読書速度曲線(図1)を描くと、4文字文節を読ませたときの曲線は、30文字からなる短文を読ませたMNREAD-Jの曲線と絶対値(最大読書速度)が大きく異なったが、臨界文字サイズはほぼ同じになった。読書速度のレベルが異なるということは、文節による音読速度から、一般の文を読んだときの速度を推定することは困難だということを意味する。しかし、読書困難が解消する臨界文字サイズが同じになったことの意味は大きい。短文の読みでも、単語探索でも、文節読みでも、文字を使ったコミュニケーションについては、課題を変えても同じ臨界文字サイズになるということである。これは2つの意味で重要である。1つは、臨床で普及してきた読書評価から得られる臨界文字サイズの推定結果は、短文の読みと単語探索だけでなく、単文節の読みにも適用できるということである。つまり、拡大率は読書評価の結果で事足りるということを意味する。2つ目は、単文節で測定した臨界文字サイズが短文読みなどの文の読みと同じだということで、検査時間を短縮しても重要な測度を求めることができるということである。読書速度の絶対値が異なったことは、読書行動の内的過程についての知見を与える。単文節の読みでは相対的に声を出している時間よりもその前の知覚的な潜時に大きく影響を受けていると思われる。

引用文献
阿佐宏一郎・小田浩一(2010). 漢字・カタカナ探索課題における臨界文字サイズの検討. 照明学会誌, 94(5), 283-288.
天野成昭・近藤公久 (1999). NTTデータベースシリーズ日本語の語彙特性. 三省堂
Mansfield, J. S., Legge, G.E. & Bane, M.C. (1996). Psychophysics of reading-XV: Font effects in normal and low vision, Investigative Ophthalmology and Visual Science, 37, 1492-1501.
中村仁美・小田浩一・藤田京子・湯沢美都子 (2000). MNREAD‐J を用いた加齢黄斑変性症患者に対するロービジョンエイドの処方. 日本視訓練士協会誌, 28, 253-261.
小田浩一・Mansfield, J. S.・Legge, G. E.(1998).ロービジョンエイドを処方するための新しい読書検査表MNREAD-J 第7回視覚障害リハビリテーション研究発表大会論文集,28-31.

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