発表

一般研究発表(ポスター)
2AM-061

顔魅力評価におけるパーツ情報統合の時間過程—評価者性別による違いの観点から—

[責任発表者] 三枝 千尋:1
[連名発表者] 渡邊 克巳:1,2
1:東京大学, 2:早稲田大学

目的
 私たちは一瞬の間に相手の顔の魅力を判断できることが知られている。しかし、判断に寄与する各パーツの重みは、顔画像が提示される時間の長さによって異なり、提示時間が20ミリ秒と短い場合には目の魅力が全体の魅力に大きく寄与しているのに対し、提示時間が100ミリ秒、1000ミリ秒と伸びるにつれて鼻や口の寄与が上昇することが示されている。
 一方で、先行研究において、魅力的と判断される顔の形態的な要素は、評価する者の性別と、評価される顔の性別の組み合わせで異なることが示唆されている。しかし、上述した顔の魅力判断におけるパーツ情報の使用に対して、性別の組み合わせが及ぼす影響は検討されてこなかった。
 そこで本研究では、1) 顔全体の魅力度評価に対するパーツの寄与、及び、2)パーツの寄与の提示時間に依存した変化における評価する側とされる側の性別の組み合わせによる違いを検討することとした。

方法
実験参加者
 38名(平均22.3歳、男性21名、女性17名)
刺激
 アジア人女性58名のフルカラー正面顔写真をモデルにして、視線方向を正面方向(直視条件)、及び左右方向(逸視条件)を向けた顔画像を合成した。顔全体(直視条件/逸視条件)に加えて、合成した画像から目、鼻、口をそれぞれ切り抜き、目(直視条件/逸視条件)、鼻、口の刺激画像を作成した。
手続き 
 パーツの魅力を評価する4ブロック(直視条件の目、逸視条件の目、鼻、口)と顔全体の魅力を評価する2ブロック(直視条件の顔全体、逸視条件の顔全体)の計6ブロックから実験を構成した。各ブロック内では刺激画像を1枚ずつ、予め定めた提示時間(20、100、1000ミリ秒)の間モニター画面上に表示し、その魅力度を7段階尺度で評価させた。常にパーツ4ブロックの後に顔全体2ブロックを実施することとし、ブロック順序は実験参加者間で均等になるよう割り付けた。
解析 
 実験を途中で終了した2名を除く36名のデータを用い、評定値を標準化得点に換算した上で解析を行った。顔全体の魅力評価への各パーツの寄与を推定するため、各条件(視線方向、提示時間)における顔全体の魅力評価を目的変数、パーツの魅力評価を説明変数とする重回帰モデルを各実験参加者内において作成した。得られた偏回帰係数に対する、評価者性別、視線方向、提示時間の長さ、パーツ種類の効果を4要因混合計画の分散分析を用いて検討した。


結果
 視線方向、パーツ種類、提示時間の有意な主効果、およびパーツ種類と提示時間の有意な交互作用が認められた(視線方向F(1, 34) = 15.8, p < .001; パーツ種類F(2, 68) = 19.6, p < .001; 提示時間F(2, 68) = 3.48, p < .05; パーツ種類×提示時間F(3.10, 105.2) = 2.67, p < .05, Greenhouse-Geisser 法による補正あり)ほか、評価者性別の主効果(F(1, 34) = 4.87, p < .05)、評価者性別とパーツ種類の交互作用(F(2, 68) = 3.23, p < .05)、評価者性別と提示時間の交互作用(F(2, 68) = 3.36, p < .05)が有意であった。
 評価者性別と提示時間の交互作用の多重比較からは、提示時間が20ミリ秒と100ミリ秒の場合には性別による差はないが(20ミリ秒: M男性 = 0.092、M女性 = 0.084、p = .85; 100ミリ秒: M男性 = 0.087、M女性 = 0.092、p = .22)、1000ミリ秒提示の場合には女性評価者のモデルにおける偏回帰係数が男性評価者のモデルにおける偏回帰係数よりも有意に大きかった(M男性 = 0.092、M女性 = 0.22、p < .01)。

考察
 女性顔の魅力評価において、女性評価者の方がパーツの魅力度の影響を受けやすく、かつ、この傾向は提示時間が長い時に顕著であることが示唆された。この結果は、顔の視覚情報処理のグローバル/ローカル優位性に関しては、男性はグローバル情報、女性はローカル情報の処理に優位性を示すという報告(Kramer et al., 1996; Roalf, Lowery, & Turetsky, 2006)と一致する。
 女性評価者がパーツ情報から受ける影響の強さについての1つの解釈としては、女性は化粧行動を通して、顔の各パーツを注視する経験を日常的に行っていることが考えられ、そのために男性の顔魅力判断とは異なる判断基準を後天的に身につけている可能性も考えられる。

引用文献
Kramer, J. H., Ellenberg, L., Leonard, J., & Share, L. J. (1996). Developmental sex differences in global-local perceptual bias. Neuropsychology, 10(3), 402−407.
Roalf, D., Lowery, N., & Turetsky, B. I. (2006). Behavioral and physiological findings of gender differences in global-local visual processing. Brain and Cognition, 60(1), 32−42.

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