発表

一般研究発表(ポスター)
1EV-157

母親から娘への男女平等意識の継承

[責任発表者] 澤田 忠幸:1
[連名発表者] 宇井 美代子:2, [連名発表者] 青野 篤子:4, [連名発表者] 滑田 明暢:3
1:愛媛県立医療技術大学, 2:玉川大学, 3:滋賀大学, 4:福山大学

目 的
 本研究では,女性の男女平等の判断基準の世代差および母親娘間での意識の継承の有無について検討する。
方 法
調査対象 20-30歳代の娘と母親207組。女子大学生232名。
調査内容 (1)男女平等の判断基準 宇井(2002,2005),Ui & Matsui(2008)を基に,大学生を対象に予備調査を行い,“各人の正当な配分”とは何かという分配公正の諸原理と,分配方法をどのようにして決定するのかという手続き的公正の二つの観点から46項目を作成した。各項目について,「賛成である(5)」〜「反対である(1)」の5件法で尋ねた。(2)性差観  伊藤(1997)の性差観尺度から10項目を用いた(α=.83)。「そう思う(4)」〜「そう思わない(1)」の4件法で回答を求めた。(3)娘から見た母親観 小高(1998)による青年の親に対する態度・行動尺度から24項目を採用し,両親の関係性に関する4項目を加えて項目を作成した。「非常に当てはまる(5)」〜「全く当てはまらない(1)」の5件法で回答を求めた。(4)フェイスシート 年齢,就業形態等について尋ねた。
手続き 匿名式の自記式質問紙調査で,母親と娘については,インターネット調査により実施した。女子大学生については,中四国地方の公私立4大学の授業で調査を実施した。
結果と考察
 分析対象者の平均年齢は,母親群で54.8±5.7歳,娘群で26.6±4.6歳,女子大学生群で19.3±1.0歳であった。母親の就業状況は,フルタイム18.8%,パート30.9%,専業主婦その他50.2%で,娘の就業状況は,フルタイム65.2%,パート20.8%,専業主婦他14.0%であった。
1.男女平等の判断基準
 全46項目について,主因子法(プロマックス回転)による因子分析を行ったところ,想定された6因子が抽出された。分配公正の諸原理を示す因子として,(1)「男女の特性の原理」(6項目;α=.73),(2)「必要性の原理」(4項目;α=.53),(3)「機会の平等」(8項目;α=.81),(4)「個人の能力の原理」(5項目;α=.89)の4因子が確認された。一方,手続き的公正の側面を示す因子として,(5)「均等配分」(7項目;α=.79),(6)「話し合いによる手続き的公正」(7項目;α=.88)の2因子が確認された。
2.男女平等の判断基準および性差観の世代差
 母親群,娘群,女子大学生群ごとに,各因子の尺度得点を算出し,その平均値を基に分散分析を行った。その結果,(1)男女の特性の原理(F (2,643)=27.05, p<.001)では,3群間で差が見られた(母親>娘>女子大学生)。(2)必要性の原理(F (2,643)=6.87, p<.001)および性差観得点(F (2,643)=10.41, p<.001)では,母親群と娘群で違いは認められず,女子大学生群よりも得点が高かった。(6)話し合いによる手続き的公正(F (2,643)=2.35, p<.10)では有意傾向が示された。一方,(3)機会の平等,(4)個人の能力の原理,(5)均等配分の原理の各得点では,3群間で違いは認められなかった。
3.男女平等の判断基準についての母娘間関連
 男女平等の判断基準の各因子の尺度得点を用いて母娘間で相関係数を算出した。その結果,いずれの因子においても,母娘間で比較的強い関連が示された((1)r=.62, (2)r=.47, (3)r=.57, (4)r=.57,(5)r=.59,(6)r=.60)。 性差観でも r=.69と母娘間での類似性が示された。
4.娘から見た母親観と母娘の男女平等の判断基準との関連
 全24項目について,主因子法(プロマックス回転)による因子分析を行い,「ポジティブな関係と影響(8項目;α=.89)」「母親との対立(4項目;α=.86)」「母親への服従(4項目;α=.69)」「一人の人間としての母親の認知(4項目;α=.68)」「両親の関係性(4項目;α=.92)」の5因子を抽出した。
 母親の男女平等の判断基準(6因子)と娘から見た母親観(5因子)および性差観,娘から見た母親観および性差観と娘自身の男女平等の判断基準(6因子)との関連を検討するために,尺度得点間の相関係数を算出した(Table 1)。     
その結果,母親の男女の特性の原理が強いほど,あるいは,機会の平等,個人の能力,話し合いによる手続的公正の原理が弱いほど,娘の性差観が強かった。また,母親の男女の特性の原理が強いほど,個人の能力や話し合いによる手続き的公正の原理が弱いほど,娘の母親への服従観が高かった。一方,母親の機会の平等や個人の能力,話し合いによる手続き的公正の原理が強いほど,娘は母親を一人の人間として認知していた。そして,娘が母親とポジティブな関係を築いているほど,自身の機会の平等が高かった。また,母親を一人の人間として捉えているほど,機会の平等や個人の能力,話し合いによる手続き的公正の原理が高かった。一方,母親への服従観が強いほど,機会の平等や個人の能力,話し合いによる手続き的公正の原理が低かった。
以上のことから,母親の男女平等の判断基準は娘の母親観に関連し,娘の母親観は娘自身の男女平等の判断基準と関連していることが明らかとなった。

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