発表

一般研究発表(ポスター)
1EV-106

漢字含有率と漢字連続長が文章の印象に与える影響

[責任発表者] 杉山 美智子:1
[連名発表者] 小田 浩一:1
1:東京女子大学

【目的】
 国や役所の公文書で書かれる日本語は難解なことも多く、日本語母語話者でも読みにくい(庵・功雄・岩田・森, 2011)。 
 読みにくさの原因として、漢字含有率(阪本・岡本・村石・佐藤, 1956)や、漢字が連続する数(例:「生活保護受給者等助成」であれば10文字,以下漢字連続長)が挙げられる(杉山・小田, 2015)。しかし、これらは文章を読む速度から得られた結果であり、主観的にも漢字要因の影響があるかは明らかでない。
 よって本研究では印象評価からこれを明らかにする。

【方法】
刺激:公文書と東京女子大学の学生要覧から抜粋した100文字程度の文章を、それぞれ9個ずつ、合計27個抽出したものを用いた(杉山・小田,2015)。それらを漢字含有率の高い群(54.45%±1.29)・中くらいの群(36.96%±0.45)・低い群(24.40%±0.55)の3水準、漢字連続長の長い群(4.59文字±0.27)・中くらいの群(2.41文字±0.15)・短い群(1.68文字±0.14)の3水準、計9つの条件になるよう書き換えた。
手続き:東京女子大学の学生120名(20.73歳±1.05)に対して質問紙調査を行った。刺激文章を提示し、13の印象評価項目を4段階で評価させた。
 評価項目は、1. ぱっと見て読む気が起きる、2. 漢字が多い、3. 読み進めることが楽、4. 理解しやすい、5. 大人向けの文章らしい、6. 繰り返し読めば意味が分かる、7. ひらがなが多い、8. 主語と述語が分かりやすい、9. 語彙に親しみがある、10. 漢字が連続している、11. 読みやすい、12. 一文が長い、13. やわらかい印象を持つ、の13項目であった。

【結果】
 文章の印象を評価する13項目について最小二乗法、バリマックス回転で因子分析を行った。その結果、第一因子として4. 理解しやすい、3. 読み進めることが楽、11. 読みやすい、 1. ぱっと見て読む気が起きる、8. 主語と述語が分かりやすい、9.語彙に親しみがある、の6項目が抽出された。クロンバックのα係数は0.899であった(表1)。これに「読みやすさ因子」と命名した。
 続いて、読みやすさ因子得点について漢字含有率・漢字連続長を説明変数として重回帰分析を行ったが、モデルは有意にならなかった。また、第一因子に入らなかった項目5. 大人向けの文章らしいと項目13. やわらかい印象を持つについて同様の重回帰分析を行った結果、モデルは有意になり、漢字含有率の標準化係数が有意であった(表2)。

【考察】
 因子分析の結果、漢字含有率や漢字連続長と関連する2. 漢字が多い、7. ひらがなが多い、10. 漢字が連続している、の3項目は「読みやすい因子」に入らなかった。また重回帰分析の結果でも、読みやすさは漢字要因によって説明されなかった。よって、漢字含有率や漢字連続長は読みやすさの印象に影響していないことが示唆された。
 一方、第一因子に含まれない項目で行った重回帰分析の結果、漢字含有率が減少すると子ども向けの文章らしい・やわらかい印象を与えることが分かった。これにより漢字含有率は読みやすさと別の次元の印象に影響していると考える。   
 以上から、文章を読みやすくするため単純に漢字含有率を減らすと、「読みやすい」印象よりも、「子ども向けの文章」という印象を与えてしまう可能性がある。しかし、漢字連続長はこの印象に影響が無かったことから、漢字連続長を短くすることで「子ども向けの文章」という印象を与えず、先行研究で指摘される読みやすい文章が実現できると示唆された。

【引用文献】
 庵功雄・岩田一成・森篤嗣 (2011). 「やさしい日本語」を用いた公文章の書き換え: 文化共生と日本語教 育文法の接点を求めて 人文・自然研究(一橋大学), 5, 115-139.
 阪本一郎・岡本奎六・村石昭三・佐藤泰正(1956).言語心理学 学芸図書出版 pp.226-pp.227
 杉山美智子・小田浩一(2015). 漢字連続長が文章の読みやすさに及ぼす影響 社会言語科学会第35回大会プログラム pp.142

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