発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-090

視覚的イメージ容量と心的操作の関係

[責任発表者] 森本 琢:1
1:北海道大学

目 的
 視空間ワーキングメモリの文脈で保持容量の問題を扱った研究は近年増加してきているものの,心的イメージの文脈で,こうした容量の問題を扱った研究は非常に少ない。そうした中,森本(2013)は,視覚イメージ容量を測定する課題の作成を試み,これらの課題で測定される視覚的イメージ容量の個人差が,視覚的ワーキングメモリ容量課題,MRT(心的回転-冊子版),VVIQ質問紙(視覚イメージの鮮明性)などによって測定される他の個人差とどのような関係性があるのか検討した。得られた各課題の変数を共分散構造分析にかけたところ,視覚的ワーキングメモリ容量課題の成績へのパスを持つ「視覚情報の保持」に加えて,視覚イメージ容量課題とMRTの成績へのパスを持つ「視覚イメージの生成と操作」といったある程度独立した2つの潜在変数の存在が見出され,視覚ワーキングメモリ容量とは独立した,イメージの生成・操作に関与する視覚イメージ容量の存在が示唆された。本研究では,イメージ容量における生成と操作の関係性に焦点を当て,視覚イメージの生成と保持に回転・反転などのイメージ操作を組み入れた課題を追加し,また,生成・操作するイメージにあわせて指や手を動かす群と動かさない群を設けることで, MRT課題,VVIQにおける成績との関係性がどのように変化するのか検討する。

方 法
実験参加者 2種類の視覚的イメージ容量課題,VVIQ,MRT課題の全てに参加した大学生計186名を対象とした。
実験計画 
回転・反転操作なし課題: 運動(あり,なし)×イメージする線の数(3線, 4線, 5線, 6線) 
回転・反転操作あり課題: 運動(あり,なし)×イメージする線の数(2線, 3線, 4線, 5線) この課題では回転・操作の一過程が加わるので,難易度を考慮して,回転・反転操作なし課題よりも線の数を少なく設定した。
刺激材料 2種類の視覚的イメージ容量課題では,正六角形の頂点を抽出したような6つの点(それぞれA〜Fと命名)を図示したものが,課題の手順を説明する際に提示された。
手続き 2種類の視覚的イメージ容量課題,VVIQ質問紙(Vividness of Visual Imagery Questionnaire)とMRT冊子版(Mental Rotations Test)が2日に分けて,集団で実施された。
視覚的イメージ容量課題(回転・反転なし) 各試行では,音声教示にしたがって点と点を結ぶ線(3〜6線条件)をイメージし,音声教示終了音の提示後に,その図形を描画した。たとえば,3線条件のある試行の場合,「AとBを線で結んでください」「BとEを線で結んでください」「CとFを線で結んでください」「ピー(音声教示の終了を示す純音)」といった一連の音刺激が提示され,参加者は,生成したイメージに基づいて,6つのドットが記載された用紙に線を描いた。なお,運動あり群では,イメージ上で点と点を線で結ぶ際に,それにあわせて人差し指を動かした。
視覚的イメージ容量課題(回転・反転あり) 点と点を結ぶ音声教示(2〜5線条件)の後,全体を180度回転または左右反転するように指示する音声が提示された。参加者はその音声から線図形のイメージを生成・操作し,音声教示終了音の提示後に,用紙に線を描いた。なお,運動あり群では,イメージ生成時の指の動作に加えて,回転・反転操作時にも操作にあわせた手の動作を行った。
 以上のような2種類の視覚的イメージ容量課題が,各18試行(練習2試行を含む)ずつ実施された。

結 果 と 考 察
 回転反転操作なし・あり課題における各条件の正答率を算出し,MRT得点やVVIQ得点との相関係数を求めた。VVIQ得点との間に有意な相関が見られた条件は無かったが,MRT得点との間には複数の条件で有意な相関が認められた(Table1)。この結果は,森本(2013)で示された,イメージの生成と操作の関係性の強さを再度支持するものと言える。また,運動なし群では,特に,イメージ生成-回転・反転操作あり課題の全ての条件(2〜5線)の得点とMRT得点間に,統計的に有意な相関が見られたが,運動あり群では同条件において有意な相関は見られなかった。独立した2つの相関係数の差の有意性検定を実施したところ,4線条件・5線条件における得点とMRT得点間の相関係数は,運動なし群の方が運動あり群よりも有意に高かった(4線条件,z=2.19, p<.05; 5線条件, z=2.70,p<.01)。すなわち,特にイメージ生成に回転・反転操作が加わるような課題については,その成績とイメージの回転操作能力(MRTで測定)の間に関係が見られるが,課題遂行時にイメージにあわせた運動を行うことで操作能力の個人差を補う可能性が示唆された。

引 用 文 献
森本 琢 (2013). 新しい視覚的イメージ容量課題の作成と評価 日本イメージ心理学会第14回大会発表論文集,19-20.

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