発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-089

線画−線画干渉課題における反応遅延間隔の効果

[責任発表者] 田爪 宏二:1
1:京都教育大学

目 的
情報の選択,処理の過程におけるディストラクタ(妨害刺激)による干渉や抑制のメカニズムを,意味的,言語的情報と関わった情報処理過程の中で明らかにする一つの手法として,線画−単語干渉課題がある。田爪(2010, 2013)は,反応遅延間隔(response delay interval:以下RDI)を導入した課題により,刺激の処理と反応(命名)活動との分離を試み,刺激の処理と反応とを同時に行うことが干渉に寄与していること,また,刺激の呈示から反応が500ms遅延されても線画と単語との意味的な関連性が干渉量に影響すること(意味関連効果)を明らかにした。
本研究では,RDIを導入した線画命名課題における,ディストラクタの属性の効果について検討するため,ディストラクタを線画とする線画−線画干渉課題を使用する。課題における干渉や意味関連効果の,RDIとの関係の特徴,および線画−単語干渉課題との差異について検討する。
方 法
 実験参加者・実験計画 参加者は正常な視力を有する大学生20名。実験計画は呈示条件(4)×RDI(4)の2要因計画。全て参加者内要因とした。線画刺激は動物,果物,衣類,家具,文具,乗物の6カテゴリー項目,各カテゴリー項目について4種類の計24枚とした。
 呈示条件 ターゲットおよびディストラクタの線画の組み合わせにより,両者間の意味的関連性を操作し,次の4条件を設定した。1.カテゴリー一致条件(SC:ターゲットとディストラクタとは異なるが,同じカテゴリーに含まれる。例:犬−猫),2.カテゴリー不一致条件(DC:両者が異なるカテゴリーに含まれる。例:犬−ミカン),3.完全一致条件(SS:両者が同一の対象を示す。例:犬−犬),4.統制条件(C:ディストラクタとしてノイズ模様を呈示)である。各呈示条件における反応潜時がC条件におけるそれよりも有意に長い場合を干渉,SC条件とDC条件との反応潜時に有意な差がみられる場合を意味関連効果とした。
反応遅延間隔(RDI) RDIは刺激の呈示から反応開始を求めるサインの呈示までの時間間隔であり,0ms,250ms,500ms,1000msの4条件を設定した。
 手続き ディスプレイ上に2つの線画を縦方向に並べて呈示し,その左に上または下方向の矢印を呈示した。RDIの時間間隔の後に2つの線画の間にサイン(バーマーカ)を呈示し,その時点で参加者に矢印が指す方向の線画(ターゲット)の命名を求めた。すなわち,矢印が指していない方の線画がディストラクタである。バーマーカの呈示から命名までの反応潜時を測定した。これを1試行とし,線画(各カテゴリーから3づつ=18)×呈示条件(4)の計72試行を1セッションとして連続して行い,参加者あたり各RDIにつき1セッションずつ,計288試行を実施した。試行呈示およびRDIの実施の順は参加者ごとにランダムとした。
結果と考察
反応潜時について,呈示条件×RDIの分散分析を行った結果,両要因の主効果および要因間の交互作用がみられた。以下では,主に交互作用の分析結果に基づき検討する。
RDIによる反応潜時および干渉の変化 全ての呈示条件において,RDI=0ms—500msの間で,RDIの増加により反応潜時が減少した。
各呈示条件,RDIにおける干渉量(各呈示条件とC条件との反応潜時の差)をFigure 1に示す。SC条件およびDC条件においては,RDI=0ms—500msの間で干渉がみられた。すなわち,RDIにより刺激の処理と反応活動とを分離しても干渉が生じたといえる。また,SS条件ではRDI=0ms—250msの間で促進がみられた。
 意味関連効果 RDI=0ms—250msの間で意味関連効果がみられ, RDIにより刺激の処理と反応活動とを分離しても意味関連効果は生じることが示された。但し,比較的短いRDIに限られ,RDIが500ms以上になると意味関連効果は消失した。
線画−単語課題との差異 線画−単語課題(田爪, 2010)では,干渉はSC条件ではRDI=0ms—500ms,DC条件ではRDI=0ms—250msにおいて生じ,意味関連効果はRDI=0ms—500msにおいて生じている。これを本実験の結果と比較すると,両者におけるRDIの効果の差異は,主にDC条件においてみられるといえる。
すなわち,本実験ではDC条件において線画−単語課題よりも刺激の処理と反応活動とが長時間分離された場合(RDI=500ms)まで干渉が持続している。また,RDI=500msにおいては意味的な関連性によらず干渉量に差がみられず,干渉が消失した線画−単語課題よりも意味関連効果は短いRDIにおいて消失したといえる。
さらに,線画−単語課題と異なり,SS条件における促進が生じている。ディストラクタが線画である本実験では,意味や音韻とともに知覚的な類似性も影響していると考えられる。

付記 本研究は平成25—27年度年科学研究費助成事業(基盤研究(C):課題番号25380909)による研究の一部である。

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