発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-088

Switching IATによるストレス状態の測定——汎用化に向けた簡便な測定手続きの検討——

[責任発表者] 佐藤 広英:1
[連名発表者] 河原 純一郎:2
1:信州大学, 2:北海道大学

問題と目的
ストレス状態の測定には安価で簡便な質問紙が多く用いられるが,記憶バイアスなどの影響を受けやすいことが報告されている(e.g., Sato & Kawahara, 2011)。こうした要因の影響を避けるため,Sato & Kawahara (2012)は,反応時間を用いてカテゴリー間の潜在的な連合強度を測定する潜在連合テスト(IAT, Greenwald et al., 1998)を用いたストレス測定を試み,その有効性を示した。さらに,佐藤・河原(2012, 2013)は,IATに内在するブロックの順序効果を排除するために,試行ごとに条件カテゴリー(自己-不安,自己-安心)をランダムに切り替えるSwitching IATを開発し,ストレス状態の反復測定への利用可能性を示した。
これまでの研究において,Switching IATによるストレス測定の有効性は示されているが,汎用的な利用を目指すには,より短い時間での測定を可能とする手続きを検討する必要があるだろう。そこで,本研究では,ターゲット呈示時間や試行数を短縮化した場合でもストレス状態の変化を検出できるかどうかについて検討を行った。
方 法
実験参加者 大学生36名を対象とし,ターゲット呈示時間各群(2sec, 1sec)に18名ずつ割り当てた。そして,比較データとして,佐藤・河原(2013)の高ストレス群の28名(3sec, 80試行),低ストレス群28名のデータを用いた。
ストレス操作 佐藤・河原(2013)の高ストレス群と同様,知能テスト(20問)を実施し,テストの困難度,時間制限,自我脅威を操作した。英語問題を一問30秒以内で回答させた。参加者には英語能力の測定が目的であり,最後に参加者の平均値と実際の得点を比較すると教示した。
手続き ストレス操作の前(pre)と後(post)にコンピュータ上で佐藤・河原(2012)のSwitching IATを実施した。課題は練習試行(10試行)と本試行(80試行)から構成された。本試行では,“自己または不安,他者または安心”(自己-不安条件)と“自己または安心,他者または不安”(自己-安心条件)のカテゴリーラベルがランダムに表示された。中央部に出現するターゲットをいずれかに分類するよう求め,分類に要する時間を測定した。Greenwald et al. (2003) に基づき条件間の平均反応時間の差分値を各参加者の全体標準偏差で除したものをDスコアとして用いた。Dスコアが高いほど,自己-不安カテゴリーの連合強度が強いことを表す。
質問紙の手続き ストレス操作の前後に,STAI(肥田野他,2000)への回答を求めた。
結 果
ターゲット呈示時間 ターゲット呈示時間各群に低ストレス群を加え,群ごとのDスコアおよび自己・不安条件の正答試行のRTの平均値の推移をFigure 1に示した。DスコアおよびRTについて,2(呈示時間群(3sec or 2sec or 1sec), 低ストレス群)×2 (実施時; pre, post)の分散分析を行った。その結果,3secでは,Dスコアにおいて交互作用が確認され(F (1,56) = 4.55, p<.05),ストレス操作後に低ストレス群との間に差がみられた。一方,2sec, 1secでは交互作用はみられなかった。
試行数 佐藤・河原(2013)の高ストレス群28名のデータを半数の試行数(40試行)で分析したものを用いた。試行数各群(80試行,40試行)に低ストレス群を加え,群ごとのDスコアおよび自己・不安条件の正答試行のRTの平均値の推移をFigure 2に示した。DスコアおよびRTについて,2(試行数各群(80試行 or 40試行), 低ストレス群)×2 (実施時; pre, post)の分散分析を行った。その結果,40試行ではDスコアとRTの両方で有意な交互作用が確認され(F (1,56) = 4.41, 6.36, ps<.05),ストレス操作後に低ストレス群との間に差がみられた。一方,80試行ではDスコアのみ有意な交互作用が確認された(F (1,56) = 4.55, p<.05)。
結 論
本研究の結果,ターゲット呈示時間が2secの場合も3secと同様の推移を示しており,Dスコアでは差がみられにくくなるものの短縮化できる可能性が示された。また,試行数を半分にした場合でも十分にストレス状態を測定可能であることが示された。

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