発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-085

4コマ漫画のユーモア刺激価の同定

[責任発表者] 野村 亮太:1
1:東京大学

目 的
 ユーモアとは,特定の刺激を認知した際に生じる一過性の快感情である。ユーモアを喚起する代表的な刺激である4コマ漫画は,ユーモアの生起メカニズムを解明するための実験刺激として用いられてきた(Nomura & Maruno, 2011)。だが,漫画刺激が反復提示されると主観的に「おもしろい」と感じる程度は低下する(Goldstein,1970)。このため,実験では異なる作品の提示に対して喚起されたユーモアを条件間で比較しなければならない。このため,実験刺激とする4コマ漫画がユーモアを喚起する程度(=刺激価)を同定しておくことが求められる。本研究では,顔面フィードバック仮説を検証する実験(Strack, Martin, & Stepper, 1988)を実習として追試する場面を念頭に置き,独自に作成した4コマ漫画作品の刺激価を測定し,順序効果等を考慮した上でこれを標準化する。そのために,漫画作品に加えて漫画提示の順序を独立変数にし,刺激価の平均値に差がみられるか否かを検討する。さらに,評定者をランダム項として加えたモデルと対比することで,個人による変動を除いたときに順序の影響がみられるか否かを検討する。
方 法
 調査対象者 大学生194(男性15,女性178,不明1)名であった。平均年齢は19.4(標準偏差1.03)歳であった。
 刺激 本研究で独自に作成した同一作者による4コマ漫画10作品であった。作者は雑誌へ漫画作品を投稿し,複数回にわたって掲載された経験がある。
 調査紙 漫画作品の提示順序を変え,簡易的にカウンターバランスをとった10パターンの冊子を作製した。まず,10作品を1から10の数値にランダムに対応付け,1と2,3と4というように隣り合う数字どうしが表裏になるよう両面印刷した。これを順に並べ,1から10のどれが最初にくるかによって10パターンを作製した。ただし,偶数始まりの場合には,2,1,4,3…というように表裏を逆転させている。ユーモア刺激価として「おもしろさ」を評定させた。また,ユーモアに影響することが明らかになっている「理解の容易さ」(Nomura & Maruno, 2011)も併せて評定させた。評定に当たっては,0から9の10件尺度を用いた。
手続き 認定心理士に関する授業のオリエンテーションの終了時に配布し,回答を求めた。この調査紙に対する回答に基づいて認定心理士の教科書に掲載される作品が決まることを説明し,動機づけを高めた。評定は自分のペースで進めていき,すべて終了した者から調査紙を提出してもらった。
 分析 おもしろさを独立変数,漫画作品および作品の提示順序(冊子番号)を従属変数とする分散分析(モデル1),モデル1に加えて評定者をランダム項とする分散分析(モデル2)を行った。ただし,理解の容易さを0と評定し,かつおもしろさを0と評定した反応については,ユーモアとしての情報処理が行われていないと判断し,反応ごとに分析から除外した。
結 果
 提示順序の効果 モデル1では,作品および提示順序の主効果が有意であった(順にF(9, 1378) = 7.42, p < .001; F(9, 1378) = 2.40, p <.05)。作品の主効果の偏相関比は,.050であった。一方,モデル2では,作品およびランダム項が有意であり(順にF(9, 1109) = 12.39, p < .001; F(169, 1109) = 4.84, p <.001),提示順序は有意ではなかった(順にF(9, 195.28) = 1.21, p = .29)。また,作品の主効果の偏相関比は,.091であった。
 おもしろさの平均値 提示順序の効果がみられなかったため,提示順序を区別しない平均値を各漫画の刺激価として算出した。各作品の平均値等の統計量を表1に示す。
考 察
提示順序(冊子番号)の主効果は,評定者をランダム項として導入した場合有意ではなかった。また,個人差を除いた作品の主効果の効果量は相対的に大きくなった。これは,提示順序の主効果が,順序ではなく各冊子に割り当てられた評定者の個人差に起因することを示している。評定者が作品すべてのおもしろさを評定し,個人差を考慮した分析を用いることを前提にすれば,全体の平均値を基準値にできる。ただし,本研究の調査対象者は女性に偏っているため,今後は男性の評定者による回答を加え,より妥当性を高めたい。
引用文献
Nomura, R. & Maruno, S. (2011). Constructing a coactivation model for explaining humor elicitation. Psychology, 2(5), 477-485.
Goldstein, J. H. (1970). Repetition, motive arousal, and humor appreciation. Journal of Experimental Research in Personality, 5, 368-372.
Strack, F., Martin, L. L., & Stepper, S. (1988). Inhibiting and facilitating condition of human smile: a nonobtrusive test of the facial feedback hypothesis. Journal of Personality and Social Psychology, 54, 768-777.
謝辞
本研究は五十嵐亮氏の協力で実現した。深く感謝する。

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