発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-077

自己鏡像への単純接触効果が自己評価に及ぼす影響

[責任発表者] 松田 憲:1
[連名発表者] 荻野 優香#:1, [連名発表者] 三浦 佳世:2, [連名発表者] 楠見 孝:3
1:山口大学, 2:九州大学, 3:京都大学

目 的
 これまでの視覚呈示刺激として顔を用いた単純接触効果研究では,他者よりも濃い顔や大きい目等といった顔の特異性や,元々の顔の好ましさといった変数の操作が行われてきた (たとえば伊藤,1996)。本研究では,参加者に自身の顔 (鏡像) への反復呈示を行った。意識的に鏡像へ注意を向けないように,鏡の代用として自己像が映りこむグレア液晶と,統制群として映り込みの少ないノングレア液晶を使用した。カバータスクとして研究とは無関係であるニュートラルなテクスチャ画像の評定を求め,注視点呈示時に背景に映りこんだ鏡像へ無意図的に接触させた。鏡像への接触前後に自己評価として自身の顔への好意度と親近性の評価に加えて,自己好意/自己有能感尺度への評価を参加者に求めることで,鏡像接触により生じる単純接触効果が自己評価に及ぼす影響を検討した。
方 法
 実験には,大学生47名 (男性21名,女性26名) が参加した。要因計画は2 (液晶ディスプレー:グレア,ノングレア) × 3 (自己評価回数:1回,2回,3回) × 2 (自己評価因子:自己好意尺度,自己有能感尺度) の3要因参加者内計画であった。参加者にはまず自己評価22項目 (藤島ほか (2003) で作成された日本語版SLCS (the Self-Liking/Self-competence Scale ; 自己好意/自己有能感尺度) 20項目と自身の顔に関する2項目) への回答を求めた。鏡像接触フェーズでは注視点を3秒呈示し,0.1秒のマスク刺激を挿んでテクスチャの呈示が3秒,テクスチャへの評定3秒を1サイクルとし,計15回行った。妨害課題として1分間の計算課題を課し,再び自己評価22項目への回答を求めた。この鏡像接触フェーズ,妨害課題,自己評価フェーズの一連のセットを計3回行った。自己評価項目内容は1回目と同じ項目を使用しているが,2回目と3回目の自己評価項目の並びの順番はランダムであった。鏡像接触で使用するニュートラルなテクスチャ画像15枚は,大学生57名による予備調査の結果に基づいて選定した。
結果と考察
 1回目〜3回目の自己評価の全体平均評定値をとり,得られたデータは,グレア液晶かつ男性の自己好意尺度に関して増加傾向にあった。自己鏡像への反復接触により,ポジティブな自己評価が得られることが推測できる。
 自己好意尺度において,グレア液晶の平均評価値は一定・増加傾向がみられ,ノングレア液晶では減少傾向であった。一方で,自己有能感尺度はどのグラフもほぼ一定であった。自己鏡像への好感度増加は自己好意尺度の上昇につながったと考える。しかし,短時間での計30回程度の鏡像接触では自己好意の上昇が自己有能感までも押し上げることはなかった。
 日本語版SLCSの自己好意尺度はα = 0.866,自己有能感尺度がα = 0.791であり,1回目の自己評価時の信頼性係数 (自己好意尺度はα = 0.886,自己有能感尺度はα = 0.827) と比較して内的整合性が低かった。その理由として,異なる条件で評価を繰り返したことが考えられる。そこで,自己評価20項目に対して探索的因子分析 (最尤法,プロマックス回転) を行った。抽出した2因子は,第1因子 (肯定的尺度) がα = 0.894,第2因子 (否定的尺度) がα = 0.758であり,第1因子に改善が見られた。液晶別と性別および液晶別と因子の交互作用で単純主効果検定を行ったところ,液晶別が男性において有意であり (F(1,129)=6.060,p = .0001),第2因子 (否定的尺度) において,液晶別の単純主効果が有意であった(F(1,258) = 5.576,p = .0005)。男性は鏡像への反復接触によって,否定的自己感が低減したと考えられる一方で,女性は両尺度因子において液晶別および反復提示回数の効果は見られなかった。これは日常での鏡像接触機会の多さが原因であると考えられる。また,男性においては,全体的にノングレアが高かったものの,グレア液晶条件における否定的尺度に呈示回数の上昇効果が見て取れる。否定的尺度は反転項目であることから,鏡像への反復接触による否定的自己感の低下が考えられる。
 以上より,ノングレア液晶よりもグレア液晶のほうが反復接触後の好感度が増加傾向にあった。また,ノングレア液晶において,女性よりも男性のほうが総合的に高い好感度が得られた。反復接触回数による自己評価の上昇効果については,女性と比べて男性のほうが大きかった。男性は普段女性と比べて鏡像接触の機会が少ないことから,本実験での反復接触の効果が大きく出たものと考える。好意尺度の平均値のグラフによると,グレア液晶では一定・増加傾向がみられたことから,単に自身の鏡像に反復接触するだけでも自己評価への好感度増加に影響があるといえる。
引用文献
伊藤純子 (1997). 顔の特異性と好ましさが単純接触効果に及ぼす影響 三重大学教育学部卒業論文
藤島善嗣・沼崎 誠・工藤恵理子 (2003). 日本語版自己好意/自己有能感尺度 (日本語版SLCS) の作成 日本社会心理学会第44回大会発表論文集, 538-539.

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