発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-073

ロールプレイがマインドリーディングに及ぼす効果の転移

[責任発表者] 古見 文一:1,2
[連名発表者] 子安 増生:3
1:日本学術振興会, 2:神戸大学, 3:京都大学

目 的
 これまでの研究で,ロールプレイは特殊的な状況におけるマインドリーディング (古見・子安,2012)や,特殊的な他者の心を読むマインドリーディング (Furumi & Koyasu, 2013)にポジティブな影響を及ぼすことが明らかになってきた。しかしながら,それぞれの研究で行われたロールプレイは,直後に行う課題で重要となる内容に即したものであった。そのため,ロールプレイの効果は,内容によるものであるのか,そもそも役割を演じるということであるのかといった議論は困難であった。また,それぞれの課題に合わせたロールプレイが他の課題におけるマインドリーディングにもポジティブな影響(転移)を及ぼすかどうかは未検討であった。
 そこで,本研究では,これまでの研究で成人におけるマインドリーディング能力を測定するために用いられてきたディレクター課題(遮蔽),ディレクター課題(色)の2種類に加え,双方の特徴を組み合わせたディレクター課題(混合)を新たに加えて参加者のマインドリーディング能力を測定した。さらに,参加者を,ディレクター課題(遮蔽)に合わせたロールプレイを行う遮蔽群,ディレクター課題(色)に合わせたロールプレイを行う色群,両方のロールプレイを行う両方群,およびロールプレイを行わない統制群の4群に割り付け,それぞれの課題に各ロールプレイがどのような影響を及ぼすかを検討することを目的とした。

方 法
 正常色覚者である大学生,大学院生83名が実験に参加した。参加者を両方群,遮蔽群,色群,統制群の4群にランダムに割りつけ,ロールプレイを用いた教示については4群それぞれに異なる教示を行った。
 参加者は,「なんでも屋さんゲーム」という設定で,コンピュータで実施されるディレクター課題を受けた。登場キャラクターはイヌとサルで,サルは人と同じ色覚(通常色覚)であり,イヌは人とは異なる色覚(制限色覚)という設定であった。またゲームでは,店長(ディレクター)が店員に注文を伝え,店員が棚の中から注文されたオブジェクトを取り出すというものであった。遮蔽課題では,通常色覚のサルが店長として登場した。棚のいくつかのスロットに遮蔽があり,店員側にはすべてのオブジェクトが見えているのに対し,店長側には遮蔽のあるスロットの裏にあるオブジェクトは見えないという状況であった。この時,店長は自分に見えているものしか注文を行わないという前提であり,店員は店長の意図を読み取って回答しなければならなかった。
 色課題では,制限色覚のイヌが店長として登場した。店長は自分の色の見え方で注文を行うが,店員は店長の意図を読み取ってオブジェクトを取り出さなければならなかった。この時,遮蔽のない場所にあるオブジェクトについてのみイヌは注文を行った。
 混合課題では,制限色覚のイヌが店長として登場した。色課題と同じ構成ではあったが,混合課題では遮蔽された場所にあるオブジェクトについてイヌは注文を行った。
 統制課題では,通常色覚のサルが店長として登場した。遮蔽課題と同じ構成ではあったが,統制課題では遮蔽のない場所にあるオブジェクトについてのみサルは注文を行った。
 ロールプレイでは,遮蔽に合わせたロールプレイでは遮蔽課題におけるサルの役割を行い,色に合わせたロールプレイでは色課題におけるイヌの役割を,仮想的に制限色覚を経験しながら行った。ロールプレイをしない群については,他者がロールプレイを行っているところを観察した。

結 果
 各課題における誤答率について,ロールプレイ(両方,遮蔽,色,統制) × 課題 (混合,遮蔽,色,統制)の2要因分散分析を行った。その結果,ロールプレイの主効果と課題の主効果が有意であった (ロールプレイ:F (3, 76) = 11.053, p < .001, ηp2 = .30, 課題:F (1, 76) = 7.49, p =. 008, ηp2 = .09)。交互作用は有意ではなかったが,下位検定を行ったところ,混合課題においては,両方群は遮蔽群と統制群よりも有意に誤答率が低く(遮蔽群:p = .012; 統制群 p < .001),また色群,遮蔽群は統制群よりも誤答率が低かった (色群:p < .001; 遮蔽群:p = .007)。遮蔽課題においては,両方群,色群が統制群よりも誤答率が低かった (両方群:p < .001; 色群:p = .005)。色課題においても,両方群と色群は統制群よりも誤答率が低かった (両方群: p < .001; 色群:p = .019)。統制課題においては床効果となっており,すべての群で誤答率は低かった。

考 察
誤答率の結果から,ディレクター課題(色)に合わせたロールプレイは,ディレクター課題(遮蔽)にも転移がみられ,ポジティブな影響を及ぼすことが示唆された。これは,ディレクター課題(遮蔽)とディレクター課題(色)との難易度の差によるものと考えられる。参加者の内観報告からは,「イヌが出てきた方が難しかった」というようなものが多く見られた。従って,困難な場面を想定したロールプレイは,より簡単な場面における他者の心の理解にもポジティブな影響を及ぼすと考えられる。

引用文献
古見文一・子安増生 (2012). ロールプレイ体験がマインドリーディングの活性化に及ぼす効果,心理学研究,83, 18-26.

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