発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-072

語彙判断時間への出現頻度の影響−対数化のすすめ−

[責任発表者] 水野 りか:1
[連名発表者] 松井 孝雄:1
1:中部大学

 語彙判断時間には単語の出現頻度,形態的隣接語数,画数等,様々な要因が影響することが知られている。中でも単語の出現頻度の影響は古くから知られる頑健なもので,出現頻度が高いほど語彙判断時間が短くなる,いわゆる出現頻度効果 (e.g., Rubenstein, Garfield, & Millikan,1970)を避けるため,語彙判断課題の刺激語の出現頻度は通常統制される。
 代表的な英語の出現頻度のデータベースは,約500の出版物中の約100万種の単語の出現頻度をカウントしたBrown Corpus (Kucera & Francis, 1967)で,大半の普通名詞の出現頻度は1から1,000の間である。一方,代表的な日本語のデータベースは,14年間に新聞に出現した約34万の単語をカウントした天野・近藤 (2003)で,2文字の漢字の普通名詞に限っても,その出現頻度は1から32,000強と非常に幅広い。
 このように出現頻度に大きなばらつきがある場合,例えば出現頻度10と出現頻度1,000には比較的大きな違いがあるが,出現頻度10,000と出現頻度11,000にはさほど大きな違いはないと感じるように,出現頻度が高いほど出現頻度値の心理的ないしは実質的な影響が小さくなるといった歪みが生じる。
 筆者らは,この歪みを解消するためには物理量と心理量の違いを表すFechner (1860)の法則に則り,心理的な差を線形に増大させるべく出現頻度を対数化する必要があるのではないかと考えた。そこで本研究では出現頻度効果,すなわち出現頻度と語彙判断時間の負の相関関係を,対数化をした場合としない場合で比較し,その適切性を検討するものとした。
方 法
 参加者 日本語を母語とする大学生34名(女性15名)。
 刺 激 単語には同音異義語のない2文字の漢字表記語で出現頻度の分散の大きい25語を選定した。非単語は,単語に用いた文字と重複しない2文字の漢字を組み合わせ,語彙判断時間に影響する転置非単語 (Mizuno & Matsui, 2013)を含まない25語を作成した。その他の画数,文字の出現頻度,形態的隣接語数は単語と非単語で等しくなるよう留意した。
 手続き SuperLab v.4.5 (Cedrus Co.)と反応ボックス (RB730, Cedrus Co.)による個別実験で,参加者には,刺激が単語の場合は“単語”ボタンを,非単語の場合は“非単語”ボタンをできるだけ早く,正確に押すよう教示した。20試行の練習の後,50試行の本試行を行った。試行の呈示順序は被験者毎にランダムで,各試行では1000 msの空白の後,画面中央にアスタリスクが500 ms呈示された後に刺激が呈示され,反応が正解ならばピンポン,誤りならばブーという音が500 ms呈示された後,次の試行に進んだ。全所要時間は約10分であった。
結 果
 Figure 1が出現頻度と語彙判断時間,Figure 2が出現頻度の常用対数値と語彙判断時間の散布図である。語彙判断時間と出現頻度の相関係数はr = -.23で有意な相関は認められず (t (23) = 1.15, ns),語彙判断時間と出現頻度の常用対数値の相関係数はr = -.46で有意な負の相関が認められた (t (23) = 2.47, p < .05)。
考 察
 出現頻度効果は,出現頻度を対数化した場合にのみ顕在化し た。これは,Figure 1を見ても明らかなように,著しく高い出現頻度の刺激のデータが出現頻度効果を隠蔽してしまうためだと考えられる。よって,語彙判断時間への出現頻度の影響を検討する際には,対数値を用いるべきと結論することができる。

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