発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-071

眼窩前頭皮質の活動は「無分別な恋愛行動」の 個人差と関わるか?:リスク行動傾向による説明

[責任発表者] 上田 竜平:1
[連名発表者] 蘆田 宏:1, [連名発表者] 阿部 修士:2
1:京都大学, 2:京都大学こころの未来研究センター

目 的
 魅力的な異性と交際することは一般的に望まれることであり, 腹側線条体や眼窩前頭皮質 (Orbitofrontal cortex, OFC)といった報酬関連領域が, こうした魅力的な異性に対する快感情を支えているとされる (Ishai, 2007; Kranz & Ishai, 2006)。一方で日常生活においては, そうした魅力的な異性にすでに特定のパートナーがいる場合も珍しくない。そうした異性に対してアプローチをしようとすることは, 社会的な評判を損なうなどの様々なリスクを伴う「無分別な恋愛行動」と言える。こうした「無分別な恋愛行動」の傾向には大きな個人差があると考えられるが, その神経基盤については明らかにされていない。OFCの活動がリスクを伴う行動傾向の個人差に関わるといういくつかの知見に基づき (Van Leijenhorst et al., 2010; Xue et al., 2009), OFCの活動が,「無分別な恋愛行動」の傾向における個人差にも同様に関わっているという仮説を立て, 検討を行った。

方 法
参加者:36名の日本人成人男性 (20-35歳, 平均25.0歳)が参加した。実験時, 12名には特定の女性パートナーがおり, 残りの24名にはパートナーはいなかった。行動データの分析において, 交際の有無による効果は示されなかったため, 脳機能画像の分析では36名のデータをまとめて解析した。
刺激:本実験には参加しない男性参加者12名による予備実験で高魅力・低魅力各60枚に分けられた (t = 18.50, p < .001), 120枚の日本人女性顔画像が用いられた。本実験では顔画像の下に, その女性が現在特定の男性と交際しているかどうかに関する架空の交際状況の情報 (恋人:あり/なし)が示された。顔画像と交際情報の組み合わせは参加者間でカウンターバランスを行った。
手続き: fMRIのスキャン中に, 画面上に呈示された女性と「どれくらい交際してみたいか」を8段階で評定する課題を施行した (1:全く交際してみたいと思わない, 8:非常に交際してみたいと思う)。刺激の呈示順序はランダムであった。
装置・分析: 脳機能画像の撮影には3.0-Tesla Siemens Magnetom Verio MRIを用いた。分析にはSPM8を用いた。

結 果
 各参加者の平均評定値に対し, 顔画像刺激の魅力 (高魅力/低魅力)×交際状況の情報 (恋人あり/恋人なし)の2要因被験者内分散分析を行ったところ, 魅力および交際状況の情報による主効果が示された (F (1, 35) = 171.25, p < .001; F (1, 35) = 6.30, p < .05)。交互作用は示されなかった (F (1, 35) = 0.001, p = .98) (高魅力 > 低魅力, 恋人なし > 恋人あり)。
 脳機能画像の分析において, 各参加者における「恋人あり」条件の評定平均値から「恋人なし」条件の評定平均値を差し引いた値 (値が大きいほど,「恋人あり」女性への選好が高いことを示す)と, BOLD信号値との相関を示す脳領域を全脳から特定した。その際, 差分値の値が全参加者の平均値よりも3SD以上下回っていた1名の参加者のデータを除外した。分析の結果, 評定差分値と, OFCにおけるBOLD信号値との間に正の相関が示された (p < .001, uncorrected; k > 10 voxels, 図)。

考 察
「無分別な恋愛行動」(「恋人あり」女性への選好)と, リスク行動傾向の個人差に関わるとされるOFCの活動との間に正の相関が示され, 仮説に沿う結果となった。この結果は,「なぜある個人は, 抑制すべき『無分別な恋愛行動』に陥ってしまうか」という問いに対し, その神経基盤に関するエビデンスを提示するものである。
 一方で, 本研究では男性参加者のみを対象としており, 男女間の性差については未検討である。一般に男性は女性に比べてより多くのパートナーとの交際を望むことが示されており (Buss & Schmitt, 1993), 認知・神経機構の性差を検討することは重要であると考えられる。また, 実験室実験にとどまらない, 実生活場面での恋愛行動と脳機能との関連についても検討していくことが重要と考えられる。

引用文献
Buss, D.M. & Schmitt, D.P. (1993). Psychol Rev, 100, 204-232.
Ishai, A. (2007). Int J Psychophysiol, 63, 181-185.
Kranz, F. & Ishai, A. (2006). Curr Biol, 16, 63-68.
Van Leijenhorst, L., Moor, B.G., de Macks, Z.A.O., Rombouts, S.A.R.B., Westenberg, P.M., & Crone, E.A. (2010). Neuroimage, 51, 345-355.
Xue, G., Lu, Z., Levin, I.P., Weller, J.A., Li, X., & Bechara, A. (2009). Cereb Cortex, 19, 1019-1027.

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