発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-070

音楽は国境を越えるか?調性知覚反応と感情反応の文化比較

[責任発表者] 松永 理恵:1
[連名発表者] 安田 利典:2, [連名発表者] 阿部 純一:3
1:静岡理工科大学, 2:早稲田大学, 3:北海道大学

目 的
 本稿では,文化の違いで,同じ音楽(西洋音楽と日本伝統音楽)に対する調性知覚と情動的反応が異なるかどうかを調べた一連の実験結果を報告する。
実験方法
 音列材料. 音列材料は,予備実験の結果に基づいて選択した24種の単音音列を基に作成した。その24種の音列は,西洋全音階に一致する音列12種(長旋法の音列6種,短旋法の音列6種)と,日本伝統音楽の音階に一致する音列12種(民謡旋法の6種,都節旋法の6種)であった。本研究では,これらの24種の音列を基に,音列の最終音が調性的中心音と一致する条件(中心音条件)と,一致しない条件(非中心音条件)の2種を作成した。従って,西洋音楽の音列24種と日本伝統音楽の音列24種,計48種の音列を用いた。
 手続き. 参加者は,各音列を聞いた後,(1)音列の最終音がメロディ全体をまとまりよく終わらせた程度を7段階(1:終止感がない〜7:終止感がある)で評定する課題と,(2)呈示された音列がHappyな感情を表現しているか,sadな感情を表現しているかを7段階(1:sad〜7:happy)で評定する課題の2種を行うことが求められた。
実験1:日本人の聞き手
 参加者. 一般的な日本人27名(平均年齢20.1歳)。
 結果.終止音評定値データに対して文化(西洋,日本)×終止音(中心音,非中心音)の分散分析を施した。終止音の主効果[F(1, 26)=41.92, p<.001],文化と終止音の交互作用[F(1, 26)=13.46, p<.01]は有意であった(図1a)。単純主効果の検定の結果,両文化において,中心音条件の方が非中心音条件よりも評定値が有意に高かった[西洋音楽:F(1, 52)=54.53, p<.001;日本伝統音楽F(1, 52)=9.11, p<.01]。この結果は,日本人が,どちらの文化の音楽おいても,音列の最後の位置に調性的中心音が出現した時の方が,非中心音が出現した時よりも,まとまりよく終わったと知覚していたことを意味する。当該文化の調性スキーマを有する聞き手は,メロディの最後に調性的中心音が出現すると,より高いまとまり感を知覚することが知られている(星野・阿部, 1984)。したがって,日本人は西洋音楽と日本伝統音楽の両方の調性スキーマを有するバイミュージカルな聞き手といえる。
 図2aに感情評定課題の結果を示す。なお,本分析では,中心音条件の音列から得られた感情評定値データのみを対象とした。感情評定値に対して旋法4種(長旋法,短旋法,民謡旋法,都節旋法)の被験者内1要因分散分析を行った結果,旋法の主効果は有意であった[F(3, 78)=41.74, p<.001]。多重比較の結果からは,長旋法,短旋法,民謡旋法,都節旋法の順に感情評定値が高いことが示された(p<.05)。この結果は,日本人参加者が,西洋音楽と日本伝統音楽の旋法を区別できることに加えて,西洋音楽の長旋法と短旋法の違い,日本伝統音楽の民謡旋法と都節旋法の違いも識別できることを示す。
実験2:東アジア人の聞き手
 参加者. 中国人15名と韓国人2名の計17名(平均年齢25.1歳)。日本滞在年数は平均21ヶ月(SD=16)であった。
 結果. 終止音評定値データに対して2要因分散分析を施したところ,終止音の主効果[F(1, 16)=3.12, p=.09],文化と終止音の交互作用[F(1, 16)=3.49, p=.08]に有意傾向が認められた(図1b)。単純主効果の検定の結果,西洋音楽において,中心音条件の評定値は非中心音条件の評定値よりも有意に高かった[F(1, 32)=6.52, p<.05]。また,感情評定課題のデータに対して1要因分散分析を施したところ,旋法の主効果は有意であった[F(3, 48)=24.83, p<.01](図2b)。多重比較の結果は,西洋音楽の長旋法と短旋法の間に有意差はないが,それ以外のペアの間には有意差があることを示した。
実験3:東南アジア人の聞き手
 参加者. ベトナム人16名,インドネシア人12名,タイ人3名,フィリピン1名の計32名(平均年齢23.9歳)。日本滞在年数は平均19ヶ月(SD=18)であった。
 結果.終止音評定値データに対して2要因分散分析を行ったところ,いずれの主効果も交互作用も有意ではなかった(図1c)。また,感情評定課題のデータに対して1要因分散分析を施した結果,旋法の主効果は有意であった[F(3, 93)=25.18, p<.01](図2c)。多重比較の結果は,西洋音楽の長旋法と短旋法の間に有意差はないが,それ以外のペアの間には有意差があることを示した。
実験4:欧米人の聞き手
 欧米人のデータは現在収集中である。結果については学会会場にて報告を行う。

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