発表

一般研究発表(ポスター)
1AM-069

画像解像度と文字の視認性

[責任発表者] 大西 まどか:1
[連名発表者] 小田 浩一:1
1:東京女子大学

目 的
 昨今、ディスプレイの解像度の向上はめざましく、ロービジョンの人の中にも、高解像度ディスプレイの方が見やすいという人がいる。しかし、視力が低い状態では、細かい輪郭までくっきり見えるという高解像度ディスプレイの持つ利点を活用できないはずである。細かい部分が見えない状態でも、高解像度の表示は見やすいのだろうか。本研究では文字画像に焦点を当て、画像を構成するブロック数を統制した刺激を作成し、それぞれの文字画像を構成する周波数のコントラスト成分量が、文字の視認性に与える影響について検討した。 
 Campbell & Robson(1968)は、サイン波に比べて矩形波の基本周波数は4/π倍成分が多く、基本周波数の成分の違いがコントラスト感度に影響すると報告した。文字画像は通常白黒二値であり、矩形波状の刺激と考えられるが、画素の少ない粗い画像では、アンチエイリアス処理のために周辺がぼやけ、よりサイン波に近い刺激となっている可能性がある。より矩形波状である、画素の多い密な文字画像では、文字を認識するために重要な周波数(アルファベット小文字では2〜3cycles/letter; Solomon & Pelli, 1994)の成分が粗い画像のときよりも増強されており、コントラスト閾も成績が良くなると予測した。

方 法
刺激:お互い形の似ている小文字のアルファベット5文字(a, c, e, o, s)の8bitグレースケール画像を刺激として使用した。文字画像の粗さは、文字を表現するのに用いるブロックの数で制御し、6, 8, 12, 16, 24, 32, 48blocks/文字高(bpl)の7段階であった。刺激画像の輝度コントラストは0.998〜0.0まで0.3log刻みで10段階用意した。
研究1手続き:刺激文字画像(コントラスト0.998)について、1文字ずつ二次元高速フーリエ変換(FFT)を行った。それぞれの文字画像のFFT結果から、画像の粗さごとに、0〜13cycles/letter (cpl)の、0度と90度の振幅を平均した。それぞれの文字の振幅を平均したものを、各画像の粗さ条件におけるコントラスト成分とした。
研究2手続き:両眼の小数視力1.0以上の日本人男女に対し、画像の粗さ条件ごとに、上下法によるコントラスト閾測定を行った。刺激の提示にはiMac 27inchを使用し、画面の平均輝度89.85cd/m2, ガンマ特性は予めリニアライズされた。視距離は400cmで、3cpl(9.5cycles/degree(cpd))の成分が十分に解像でき、高周波(例:9cplの成分=28.6cpd)はほとんど解像できない距離であった。

結 果
研究1:FFTの結果(図1)、3cplの成分は、6bpl、8bpl、12bplと段階的に多くなるが、それ以上はほぼ同じ量が含まれていた。48bplは、6bplの1.14倍成分が多かった。
研究2:6, 8, 12bplと画像が密になるにつれて、段階的にコントラスト閾が低くなり、見やすくなる傾向がみられ、12bpl以上ではほぼコントラスト閾が一定になった。48bplの文字画像でのコントラスト閾は、6bplの時よりも1.74倍低かった。また、FFTで得られた3cplのコントラスト成分(対数)および、参加者ごとに得られた48bplのコントラスト閾(対数)を説明変数、参加者ごとのコントラスト閾(対数)を被説明変数として、強制投入法による重回帰分析を行った。参加者ごとの48bplのコントラスト閾は、参加者ごとのコントラスト閾の絶対値の違いを説明する変数として用いた。調整済みR2は0.771となり、この2つの変数を投入した重回帰モデルは有意であった(p<.001)。48bplのコントラスト閾の偏回帰係数(B)は0.92であり、3cplのコントラスト成分のBは-4.13であった。

考 察
 一番密な48bplの画像は、一番画像が粗い6bplよりも3cplの成分が多く含まれていた。また、6bplより48bplの文字でコントラスト閾が低く、よく見えることがわかった。縞刺激の基本周波数の成分がほぼそのままコントラスト閾に影響するとしたCampbell & Robson(1968)とは異なる傾向がみられたが、ブロードバンド刺激である文字の同定にとって、特定の周波数成分の寄与が非常に大きいことがわかり、先行研究(Solomon & Pelli, 1994)を支持する結果となった。
 本研究の結果から、文字を構成する画素を増やし、密な画像で文字を表示することで、文字の認識に重要な周波数(3cpl)のコントラスト成分が増強され、コントラスト閾が低くなる可能性が示唆された。よって、細かい部分が見えないロービジョンの状態でも、高解像度で表示することで、文字の視認性を高める可能性が示された。

引用文献
Campbell, B. Y. F. W., & Robson, J. G. (1968). Application of Fourier analysis to the visibility of gratings. The Journal of Physiology, 197(3), 551–566.
Solomon, J., & Pelli, D. (1994). The visual filter mediating letter identification. Nature, 369(6479), 395–397.

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