発表

一般研究発表(ポスター)
3EV-029

災害時電話安否確認における発信者のストレスと対策法の検討

[責任発表者] 須藤 竜之介:1
[連名発表者] 佐藤 大輔#:2, [連名発表者] 高野 裕治:3, [連名発表者] 持田 岳美#:4
1:九州大学, 2:日本電信電話NTTネットワーク基盤技術研究所, 3:同志社大学赤ちゃん学研究センター, 4:NTTコミュニケーション科学基礎研究所

目 的
 緊急時には,平常時には意識されない問題が顕在化する。その一つとして,災害時安否確認の問題がある。震災をはじめとする災害時には,輻輳と呼ばれる非常に通話が繋がりにくい状態が発生する。災害のような緊急事態において,他者と連絡がとれないという状況が非常にストレスフルであることは想像に難くない。実際,我々が事前に行ったアンケートから,災害時の電話がつながらない状況に多くの人々が不安を感じることが示唆されている。この問題の回避策として,我々は,発信可能な時間を制限して通話のつながりやすさを改善する方法を考案した。しかし,人々は対策法のような形でつながりやすさを改善するよりも,従来と同様にいつでも電話をかけられる状況の維持を重視していることが事前調査からわかった。これらを踏まえ,本研究では災害を想定した行動実験を行い,電話安否確認における発信者のストレスと対策法の効果を検討する。

方 法
参加者 関東圏在住の成人140名(男性1名,女性139名)であった。
 実験条件 電話の発信方法を参加者間で操作した。通話がつながりやすいが発信可能時間が制限される対策法と通話がつながりにくいがいつでも発信可能な従来法の2条件である。
 手続き 参加者は1セッション20名で実験会場に集められた。まず,参加者は大規模地震に遭遇した架空の人物のストーリーが書かれた台本を読み,役づくりを行った。その際,参加者は安否確認をする発信者役と,安否連絡を受ける受信者役に分けられた。役づくりが十分に終了した後,実験室へ移動した。実験室にある四つのブースのうち,二つを発信者部屋,残りを受信者部屋として,各ブースに5人ずつ参加者を配置した。実験課題として,発信者役の参加者は3回の発信可能時間の中で,なるべく多くの受信者役に安否確認の連絡をとるよう教示した。なお,対策法条件では,1時間ごとに6分間の発信可能時間が与えられた。一方,従来法条件では,30分ごとに発信可能時間が与えられ,発信可能時間中は常時発信することが可能であった。安否確認がとれるごとに,発信者は電話がつながるまでのストレスと安否連絡が出来たことの安心感を測定する質問項目に回答した。

結 果
 全参加者のうち,発信者役に割り当てられた参加者70名のデータを解析に使用した。実験条件(対策法・従来法)を独立変数として,主観的なストレス,安心感に対してt検定を行った。その結果,ストレスにおいて有意差がみられた(t(63) = 6.86, p < .01) (Figure 1)。一方,安心感では有意差はみられなかった(p’s > 1.0)。各実験条件でストレスを基準変数,発信回数を説明変数とした回帰分析を行った(All p’s < .01) (Figure 2)。

考 察
安否確認実験の結果,対策法は発信者のストレスを低減することが示された。事前調査での対策法の評価は好意的とは言えなかったが,通話のつながりやすさはストレスの低下に寄与しているようである。また,安心感においては実験条件の差はなく,「声」を通して安否が確認できることの心理的な重要性が示されたと言える。この傾向は事前調査でも同様であった。回帰分析の結果から,対策法は従来法よりも発信回数がストレスに与える影響が小さかったが,対策法であっても発信回数はストレスの強力な要因であることも示された。さらに,従来法と比較して対策法ではストレスに対する発信回数の説明率が低かった。これらのことから,通話の繋がりやすさは確かに発信者のストレスを減少させるが,ある程度の繋がりやすさが保たれている状況では,単純な発信回数だけでは発信者のストレスを説明できないことが示唆された。
今後は,本研究の知見の一般化に向けた追試を行い,災害時安否連絡のストレス要因の詳細を明らかにすることが課題である。また,災害時連絡の通信問題対策として,発信者の行動を強制的に制限するのではなく,自主的な抑制を促すような災害の被災者にとって心的負荷の少ない通信制御方法のあり方についても検討していきたい。

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