発表

一般研究発表(ポスター)
3AM-035

交際相手からの心理的暴力被害経験と投資モデルとの関連−包括的IPV (Intimate partner violence)尺度の構築に向けて(3)−

[責任発表者] 寺島 瞳:1
[連名発表者] 宮前 淳子:2, [連名発表者] 松井 めぐみ:3, [連名発表者] 竹澤 みどり:4, [連名発表者] 宇井 美代子:5
1:和洋女子大学, 2:香川大学, 3:岡山大学, 4:富山大学, 5:玉川大学

目 的
 親密な関係における暴力(Intimate partner violence : IPV)のうち,特に心理的暴力は身体的暴力に比べて頻繁に起こりやすく多様であり,心理的暴力のほうが被害経験も多いことが明らかとなっている(寺島他,2013)。また,IPVとその他の変数について心理学的な研究は多く行われてきているが,個人変数に比べて当事者間の関係的変数の研究はあまり多くないと指摘されている(赤澤他,2011)。しかし,IPVは関係性の中で起きる問題である以上,暴力の種類や頻度と当事者間の関係の質とは密接な関係があるものと考えられる。そこで本研究では関係性の要因として投資モデル(Rusbult,1980)および交際期間の長さに着目する。これらの要因と宮前他(2015)による心理的暴力被害経験尺度との関連を検討することで,関係性の質と心理的暴力にどのような関連があるかについて示唆を得ることを目的とする。
方 法
 分析対象者:「心理的暴力被害経験尺度の作成と信頼性の検討−包括的IPV尺度の構築に向けて(1)」 (宮前他,2015)と同じであった。
分析項目:1. 基本情報 性別(男性168名,女性223名)および,現在の恋人との交際期間。平均期間31.22ヶ月(SD=28.90)。2. 恋人からの心理的暴力被害経験 心理的暴力に関する69項目(3項目はダミー項目)に対して,被害経験の頻度を3件法で質問。因子分析の結果 (宮前他,2015)から得られた,9因子(「不機嫌・拒否」「束縛」「見下し」「外界からの遮断,監視」「ネットを利用した侵害行為」「プライバシー侵害行為」「怒りをぶつける行為」「脅迫」「関係性を裏切る行為」)の36項目を分析に使用。3.投資モデル尺度(古村・仲嶺・松井,2013) 関係満足度,投資量,代替肢の質,コミットメントの各要素を測定する22項目7件法。
結 果
 まず,投資モデル尺度について古村他(2013)に従い,因子分析をした結果,先行研究どおりに因子が分かれた。そこで,下位因子ごとに平均点を算出した。
松井他(2015)において,心理的暴力被害経験尺度のいくつかの下位尺度で性差が見られたため,男女別に心理的暴力被害経験尺度の下位尺度,投資モデル尺度の関係満足度,投資量,代替肢の質,コミットメント,および交際期間の相関係数を算出した(Table 1)。その結果,男女ともに,ネットを利用した侵害行為はすべての変数と無相関であり,脅迫,関係性を裏切る行為は,関係満足度およびコミットメントと負の相関があった。
次に,性差が特徴的であったのは,女性でのみ不機嫌・拒否,束縛,怒りをぶつける行為と投資量との間に正の相関が見られたこと,逆に男性でのみ見下し,怒りをぶつける行為と代替肢の質と正の相関が見られたことであった。その他,女性でのみ,束縛,外界からの遮断・監視,プライバシー侵害行為とその他の各変数と関連が見られた。また,交際期間との相関が見られたのは,不機嫌・拒否および怒りをぶつける行為のみであった。
考 察
 自分が相手との関係の中で費やすものが多いと感じている女性ほど,不機嫌・拒否,束縛,怒りをぶつけられる経験を多くしていることが分かった。不機嫌・拒否と怒りをぶつけられる行為は,交際期間とも正の相関があることから,既に相手に多くを投資しているといった心理が,男性の不機嫌な態度や怒声などに耐えようとする傾向につながり,かえって相手と別れられなくなっている可能性が示唆された。また,女性において,束縛,外界からの遮断・監視,プライバシー侵害行為など,支配・監視されるような経験と関係満足度やコミットメントと負の相関が見られたため,男性が女性をつなぎとめようとこれらの行為をしているのであれば,それは,逆効果となることも示唆された。一方で,男性においては,見下されたり,怒りをぶつけられると,他にも代わりがいるといった感じを生じさせ,相手から気持ちが離れていくものと考えられた。

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