発表

一般研究発表(ポスター)
3AM-034

交際相手からの心理的暴力被害経験における性差の検討 包括的IPV (Intimate partner violence)尺度の構築に向けて(2)

[責任発表者] 松井 めぐみ:1
[連名発表者] 寺島 瞳:2, [連名発表者] 宇井 美代子:3, [連名発表者] 竹澤 みどり:4, [連名発表者] 宮前 淳子:5
1:岡山大学, 2:和洋女子大学, 3:玉川大学, 4:富山大学, 5:香川大学

目 的
 親密な交際相手からの暴力は,男女で被害内容や被害経験が異なることが明らかにされている。宇井他(2014)によるIPV (Intimate partner violence)の実態の検討では,男性は恋人の行為自体を,女性は自分も何らかの影響を受けるような恋人の行為を,それぞれ恋人からの否定的行為として挙げていた。またそれらの否定的行為がなぜ行われたかについての理由推測にも,性差のあることが明らかになっている(松井他,2014)。
 その一方,笹竹(2014)はIPVの心理的側面では身体的な力の優位性が低い女性であっても加害者となりうると述べ,心理的IPVにおいては,男性も女性と同程度の割合で被害にあっていることが示されている。しかしながら,笹竹(2014)の研究では,心理的束縛のみを心理的IPVとしており,その他の心理的暴力の性差は明らかになっていない。心理的暴力には様々な内容,深刻度のものがあると考えられるので,本研究では宮前他(2015)で作成された心理的暴力被害経験尺度を利用し,具体的に被害経験の性差について検討する。
方 法
 分析対象者と調査方法は全て,「心理的暴力被害経験尺度の作成と信頼性の検討−包括的IPV尺度の構築に向けて(1)」 (宮前他,2015)と同じであった。分析項目:1. 基本情報 性別(男性168名,女性223名),2. 恋人からの心理的暴力被害経験 69項目(3項目はダミー項目)の心理的暴力に対して,被害経験の頻度を3件法で質問。因子分析の結果 (宮前他,2015)から得られた,9因子(「不機嫌・拒否」「束縛」「見下し」「外界からの遮断・監視」「ネットを利用した侵害行為」「プライバシー侵害行為」「怒りをぶつける行為」「脅迫」「関係性を裏切る行為」)の36項目を分析に使用。
結 果
 各因子に含まれる項目の平均値(合計得点÷項目数)を下位尺度得点とし,男女で差があるかどうかt検定を行った。その結果有意な差が見られ(Table 1),男性は「ネットを利用した侵害行為」(t(190)=2.90, p<.01),「脅迫」(t(243)=2.09, p<.05),「プライバシー侵害行為」(t(324)=1.88, p<.10)の被害経験が多く,女性は「見下し」(t(388)=2.26, p<.05),「怒りをぶつける行為」(t(388)=1.77, p<.05)の被害経験が多かった。
考 察
本研究の結果から,交際相手からの心理的暴力は,男女で被害経験に差があることが分かった。男性の方が被害経験が多かったのは,2つの「侵害行為」と「脅迫」であった。この内,「ネットを利用した侵害行為」は,インターネット上にプライベートや誹謗中傷等を勝手に書き込まれるという行為である。このような,交際相手に直接ではなく知り合いもしくは不特定の人に向かって行う行為は,女性でも簡単にできてしまうため,男性が被害に遭いやすいと考えられる。また「ネットを利用した侵害行為」には,“私を辱めるような写真を,勝手にインターネット上にアップされた”という行為も含まれている。これにはリベンジポルノも含まれると考えられたが,今回の調査では男性の方が被害経験が多く,女性の被害経験者はいなかったため,実際にどのような写真がアップされているのか,具体的に調査する必要がある。「プライバシー侵害行為」の方は,携帯(履歴・メール)や手帳,持ち物を勝手に見られるという被害経験であり,自分の知らないところで被害に遭うという特徴が共通している。「脅迫」は“相手の望む通りにしなかったら,相手がリストカットなどの自傷行為をした”“「別れるなら自殺する」などと脅された”という被害経験である。男性は自分が危害を加えられるという形ではなく,相手が相手自身を傷つけること(もしくはその可能性の示唆)によって,相手の望む通りにさせられるという,遠回しな脅迫を受けやすいようである。
逆に女性の方が被害が多かったのは,「見下し」「怒りをぶつける行為」であった。「見下し」は外見や能力等をバカにする事柄を言われることで,女性は相手から直接,自尊心を低下させられるような事を言われやすいことが分かった。「怒りをぶつける行為」は怒鳴られる,罵られる,凄まれるなどで,言葉とはいえ,力ずくで従わせようとする態度を女性はとられやすく,「見下し」と共通して,直接暴力をぶつけられる傾向があることが分かった。
 その他の,不機嫌,束縛,監視,裏切りという心理的暴力は,被害経験に性差がみられず,性別以外の個人要因による違いがあるのではないかと思われる。特に「束縛」「不機嫌・拒否」は男女共に被害経験が他より多いことが分かった。今後はより詳細な被害経験を受ける要因等の検討が必要である。
引用文献
笹竹(2014). 学生相談研究, 35, 56-69.; 松井他(2014). デートDVの実態の検討(10) , 日心78回大会, 1260. ; 宇井他(2014).デートDVの実態の検討(9) 日心78回大会,1262.

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