演題

第63回日本臨床検査医学会学術集会 / 口演
7-11

急性心膜炎における心電図変化-特にJ波と不整脈について-

[演者] 内山田 健次:1,2
[著者] 中川 幹子:1, 安部 一太郎:1, 手嶋 泰之:1, 岩尾 哲:3, 米増 博俊:2, 高橋 尚彦:1
1:大分大学 医学部 循環器内科・臨床検査診断学講座, 2:大分赤十字病院 検査部, 3:大分赤十字病院 循環器内科

【背景】従来より早期再分極は心電図のQRS-ST接合部(J点)の上昇として認識され、若年男性に多く見られる正常亜型として扱われてきた。ところが近年、QRS波の終末にあるJ波が特発性心室細動と密接に関係していることが相次いで報告され、J波症候群として注目されている。しかし、J波は健常人にも高頻度に認められ、虚血性心疾患や心筋症などの器質的心疾患においてもJ波の出現が多く報告されている。J波の電気生理学的発生機序として、心筋内の心外膜側と心内膜側の活動電位の差によって生じる電気的な圧勾配が関与していると考えられているが、未だ不明な点が多い。我々は、急性心膜炎の経過中に一過性にJ波が出現する症例を経験し、心外膜側心筋の電気的傷害とJ波の関連性、さらに不整脈発生との関連性に注目した。
【目的】急性心膜炎患者における心電図変化を詳細に解析し、J波の出現や不整脈の発生について検討する。
【方法】対象は典型的な胸痛、心電図上広範囲のST上昇やPRの低下、心外膜液貯留より急性心膜炎と診断された33例(男性24例、平均年齢:60.3±14.2歳)である。急性心膜炎罹患前(入手可能であれば)、経過中、および治癒後の標準12誘導心電図より、PRレベル、STレベル、J波の有無および心房・心室不整脈の有無について検討した。QRS終末部に認められる振幅0.1mV以上の陽性のノッチあるいはスラーが少なくとも2誘導以上で認められる場合をJ波陽性と定義した。ホルター心電図でJ波が記録できた症例では、J波振幅と先行RR間隔との相関関係を検討した。
【結果】急性心膜炎経過中にST上昇に合併したJ波は、27例(82%)に認められた。代表的な1例では、第1病日にST上昇とともにノッチ状のJ波が出現し、第2病日にスラー状に変化し、第3病日にはJ波は消失した。他の2例では、急性心膜炎経過中に一過性にV1-2誘導においてCoved型ST上昇を示した。28例(85%)において、発症時の心電図でPRレベルの低下を認めた。発作性心房細動(粗動)や上室不整脈の頻発が13人(39%)の症例で観察されたが、心室期外収縮の頻発は1例にのみ認められた。ホルター心電図にて記録されたJ波の振幅は、先行するRR間隔と有意な正の相関を認めた。
【考察】急性心膜炎の経過中に、高頻度(82%)にJ波が出現したことより、心外膜側心筋の電気的異常がJ波出現と関連している可能性が示唆された。約1/3の症例では発作性心房細動などの上室不整脈が出現したが、心室不整脈が出現は稀であった。
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